マルベリーは1997年に設立、以来車椅子などの介護・福祉器具レンタルをメインとしてきました。実は介護ロボットなどを取り扱い始めたのは私の代になってからで、ここ10年位です。それまで私は長く医療機関や調剤薬局が取引先の医薬品卸の営業に従事していたのですが、マルベリーに来て患者様や要介護者様と直接顔を合わせる機会を持てたことがとても新鮮でした。当社のレンタルを利用されている方のご自宅などをいろいろ訪問させていただいたのですが、パーキンソン病の患者様宅を訪問した時、普段は歩行できない患者様がアシスト歩行器を使って歩くことができたのを目の当たりにし、「介護の負担軽減には絶対にロボットが必要だ」という思いを強くしまして。早速当時開発されたばかりの移乗支援のマッスルスーツを当社で取り扱えないかと東京理科大のベンチャー企業を直接訪問したのですが、そのスーツの値段が1台70万円もすると知って仰天しました（笑）。このように、動作支援ロボットという分野自体もまだまだ市場として未発達な時期から、コツコツと先進機器とのつながりをつくり始められたことが、今となっては大きな財産です。

ここ数年、介護ロボット導入支援の補助金制度が確立したことや無償貸与などにより、介護現場での先進機器導入が増えていると実感しています。そんな中、さらに当社ができることとして、今年から介護事業所などで実際に体験していただいた介護ロボットの実証実験結果をメーカー様へフィードバックする「ニーズ・シーズマッチング支援事業」を立ち上げました。またマルベリーの営業が介護の現場で感じたことを直接メーカー様にお話しする意見交換の場も設けています。さらにはメーカー様と共同で取り組む介護ロボット開発も進行中です。介護の現場と先進機器メーカーとの架け橋となりながらこれからも介護する側・される側双方の役に立つ介護機器の開発に携わっていければと思います。また、機器による介護の普及が進む中でますます大切なのが人の手による介護だとも思っています。間違いなく今後介護を必要とする人は増えていきます。そこで欠かせなくなってくるのが地域包括ケアシステムの構築です。来るべき時代に備えて本当に必要な介護とは何なのか、マルベリーの根底にある“人の暮らしに寄り添う”ことを大切にしながら、住み慣れた地域でその人らしく暮らし続けることができる“住みよいまちづくり”にも尽力していきたいと考えています。

※2023年9月取材